今回のテーマは、「幼児の手づかみ食べと、スプーンの使い方」です。
こんにちは!「管理栄養士」「現役の保育園栄養士」の椛嶋貴子です。
離乳食が完了する1歳半ごろの子どもは、まだまだ「手づかみ食べ」が多い時期。「スプーンを使ってほしい」というパパ・ママの気持ちもありますが、手づかみをすることによって、自分自身で食べる力を育てています。
具体的にどんな機能を獲得しているのか、またいつ頃、どのようにスプーンに移行すればいいのかを詳しく見ていきましょう。
幼児期は手づかみ食べで育つ。自分で食べる喜び
子どもはまだ道具を使って食べることができない時期から、「これが食べたい!」という意志をしっかりと持っています。
食べものを手で触って、口に入れる仕草を見せるのは、早いお子さんで生後9~11ヵ月ごろから。手をある程度自由に使えるようになるにつれて、実際の食事でも「手づかみ食べ」を始めます。
手づかみ食べは、自分の気持ちと行動がつながる、大きな喜びの瞬間です。「食べられた!」という達成感を得られることで、「もっと自分で食べたい!」という気持ちも育っていくでしょう。
子どもの手づかみ食べを分析!“頭”で考え、“手”や“口”を連動させて動かす
「手づかみ食べ」で起きていることを、もう少し詳しくみてみましょう。
このように、手づかみ食べはカラダのさまざまな機能を連動して使います。五感を使いながら、口までの距離感や食べやすい量を学んでいるんですね。
実はこれこそが「道具を使って食べる」のに欠かせないステップ。
手づかみ食べをしっかりとすることで、スプーンやフォーク、お箸を使って食べるための土台ができあがります。
スプーンを持たせるのはいつ頃?どうやって持たせたらいい?
手づかみ食べを繰り返すなかで、次第に道具を使った食事ができるようになっていきます。手の発達に合わせて、適切な道具を選びながら、使い方をきちんと教えてあげるようにしましょう。
初めは、もっとも扱いやすいスプーンから始めます。
導入する時期の目安は、「スプーンを持ちたい意欲」が見られたら。
最初はうまく使えなくても、持てているだけで十分です。食事を食べさせているパパやママが一緒に持つ、ところからゆっくりと始めましょう。
その中で、子どもが自分で上手にスプーンを使えるようになるために、育みたい2つのポイントがあります。
①しっかり肘を持ち上げられる
肩の可動範囲が狭かったり、腕の筋力がまだ足りないうちは、わきが締まり、肘が落ちたままになっています。しかし、つかみ食べを繰り返すうちに肩の関節の可動域が広がり、しっかりと肘が上がるようになります。そうなると、食事を口に運ぶ動きがスムーズになります。
②手首をやわらかく動かせる
手首を自在に動かせるようになることも、スプーンを上手に使える要素の一つ。お皿に盛られた料理を狙いどおりにすくえるようになります。
目的のものをすくえる頃には、食事中のストレスも少なくなるでしょう。スプーンで食べたいものがすくえないイライラが減り、「これが食べたい」という気持ちを自分で満たすことができるからです。気持ちよく食べられるのは、お子さんにとってもうれしいことですよね。
スプーン食べの移り変わり
スプーンの持ち方は、カラダの発達とともに変化していきます。
「パームグリップ」「フィンガーグリップ」「ペングリップ」に分けて、簡単にご紹介します。
パームグリップ
上から握るように持つ方法です。
スプーンを持ち始めた頃は、おおよそこの持ち方をします。
フィンガーグリップ
上から握るように持ちながら、親指と人差し指の腹でしっかりはさみます。
手指の発達が進み、指の力がだんだんとついてくると、このように持つようになります。
ペングリップ
ペンを持つように親指、人差し指、中指の三本で持つ、大人と同じ方法です。この持ち方ができるようになるころには、体力や集中力もだいぶついてきて、最後までスプーンを使って自分の力で食べきれるお子さんも増えてきます。
より詳しい「手の発達の進み方」は、前回のコラムでお話しています。
子どものこんな持ち方には注意!
スプーンを使っているうちに、これらの持ち方とは異なる持ち方をするときがあります。肘が上がっていなかったり、手首が硬くてうまく使えていなかったり……といった場合も多いので、少し注意して見てみましょう。
逆パームグリップ
スプーンを下から握るように持つ方法で、肘が上がっていなくても食べられてしまいます。
いつまでも肩関節の可動域が広がらず、必要な筋肉もつきづらいため、次のステップに進むのが難しくなります。
親指、人差し指以外の指を絡める持ち方
スプーンが重いと、しっかり持つために指を絡めるようになるお子さんもいます。
力の入れ方が変わり、お箸を持つときにも変な癖がついてしまう傾向があります。
子どもの成長に合わせて、ゆっくりと
スプーンの持ち方は発達に伴って変化していきます。一人ひとりの成長に合った支援をしていくことで、将来的にはお箸も上手に持てるようになります。「たかがスプーンの持ち方、と侮るなかれ!」なのです。
正しい持ち方をすれば、カラダの負担が減り、気持ちの面でもストレスなく食べられます。これは手づかみ食べから、スプーンの使い方、お箸を持つところまで一貫してつながっています。だからこそ、お子さんの様子を見ながらゆっくりと進めてくださいね。