今回のテーマは「保育園が実践している調理法について」です。
こんにちは!「管理栄養士」「乳幼児食指導士」「こども成育インストラクター」の藤原朋未です。
わたしは以前、保育園栄養士として毎日園児の給食を作っていました。そんな中で「保育園の給食は食べるのに、おうちでは食べてくれない」というお悩みを持つ、保護者の方にたくさん出会いました。
やっぱり誰もがみな悩んでいるんですよね。
でも、まず知っていただきたいのは、子どもの好き嫌いや食べムラ・偏食などは、料理の腕とは関係がないということ。
「おいしくないから食べてくれないのかな」と落ち込んだり、「完璧な料理を作らなきゃ!」と気負ったりする必要はまったくありません。
初めて給食を作ったとき、保育園ならではの調理法にとても戸惑いました。
「こんな切り方をするの?」
「これも加熱をするの……!?」
と驚きの連続でしたが、それらはすべて、子どもにとって食べやすくするための大切な工夫だったのです。
今回は、そんな給食調理の鉄板技である3つのコツをご紹介します。ご家庭で実践できるカンタンなものばかりなので、ぜひお試しくださいね。
保育園給食 子どもがパクパク食べる3つのコツ
① 肉や魚は焼いてから切る
肉や魚を食べやすいようにと初めから小さく切りすぎると、火が通りすぎてしまい、硬くなったりパサついたりする原因になります。
焼いた後で切るほうが調理しやすく、時短にもなるんですね。火加減は弱火~中火でじっくりと加熱、薄力粉をまぶして焼くとパサつき防止に効果的です。
★切り身魚
1/2切れ程度に切ってから調理します。焼き上げてから、さらに小さく切ったりほぐしたりしてあげましょう。骨や皮も調理後のほうが取り除きやすいです。
★鶏肉
唐揚げ用サイズが適当です。1〜2歳児向けに小さくする場合は、加熱後に切るとジューシーさが保てます。
★豚肉や牛肉
薄切り肉がおすすめです。
★ひき肉
そぼろ状にするよりも、ハンバーグや肉団子のように玉ねぎやパン粉、たまごなどとあわせてまとめましょう。ほどよい弾力が出て噛み切りやすくなります。
すべてを一口サイズにするのではなく、あえて大きめに切ることで「かじり取る」ことや、「フォークやお箸で切り分ける」ことに挑戦させてあげましょう。
むずかしければ、後で切ってあげればよいのです。そのためにも、大きめサイズで調理することを意識してみてくださいね。
② 野菜は種類によって切り分ける
野菜は硬さや食感がさまざまなので、種類によって切り方を変えるといいですよ。子どもにとって食べやすい切り方をご紹介します。
★葉もの野菜
ほうれん草・小松菜・キャベツ・白菜など
ペラペラとした葉もの野菜は噛み切りにくく、口に残りやすいのでなるべく細かくきざみます。
特に葉の部分は繊維を断ち切るように、横だけではなく縦にも数回包丁を入れます。ほうれん草はゆでる前に切ることで、苦味の原因となるアクも抜けやすくなります。
<メニュー例>和えもの・おひたし・サラダなど
★根菜類や歯ごたえのある野菜
にんじん・ごぼう・玉ねぎ・ピーマン・きゅうり
硬い野菜は、以下の2通りの切り方を使い分けてみてください。
■みじん切り
細かくきざみ、じっくりと炒めて煮込みます。食感が残らないよう、やわらかく煮込むのがポイントです。野菜の甘味やうま味が引き出され、少ない調味料でもおいしく仕上がります。
<メニュー例>ミートソースや麻婆豆腐、汁ものなど
■せん切り・細切り
あえて食感を残した切り方です。ただし、口当たりがよくなるよう“繊維を断ち切る方向”に切るのがポイント。
にんじんや大根、きゅうりなどは輪切りや斜め切りにしてからせん切りに。玉ねぎやピーマンは繊維に対して横向きに包丁を入れてあげましょう。
<メニュー例>炒めもの、サラダ、汁ものなど
③ サラダはすべて加熱する
ちぎったレタスをむしゃむしゃ、スティックきゅうりをポリポリ……生野菜を豪快に食べられる子もいるでしょう。
しかし1~2歳児さんや野菜を苦手に感じているお子さんにとって、生野菜はとてもハードルの高い食材です。
じつは保育園給食では、レタスもきゅうりもさっと湯がいて加熱をしています。殺菌という意味もありますが、「食べやすさ」を重視して加熱調理をします。食材の匂いや香りがやわらぎ、調味料とも馴染みやすくなります。
また、ドレッシングに使われる酢も加熱をします。
酸味は本能的に「腐敗」と認識する味であり、食経験の少ない子どもとって苦手に感じる傾向があります。あわせた調味料は、ひと煮立ちさせると酸味がやわらぎます。
野菜がモリモリ食べられる!給食の春雨サラダ
②・③のコツを使った、給食の春雨サラダをご紹介します。せん切りにした野菜を加熱して、酸味を飛ばしたドレッシングで和えます。
材料 大人2人+子ども2人分
・緑豆春雨(乾 ショートタイプ) ・・・40g
・にんじん・・・1/5本
・きゅうり・・・1本
・ハム・・・4枚
・いりごま・・・適量
A
・砂糖・・・小さじ2
・しょうゆ・・・小さじ2
・酢・・・小さじ4
・ごま油・・・小さじ2
作り方
① 耐熱ボウルにAを入れて、600Wの電子レンジで40秒加熱する。
② きゅうりとにんじんはせん切りにする。ハムは半分に切ってから細切りにする。
③ 鍋に湯を沸かし、春雨と具材をゆでる。
④ 水でしっかりと冷やして水気を切り、ペーパーなどでよくしぼってボウルに入れて、①といりごまを加えて和える。
レシピのポイントは4つ
✔ きゅうりとハムをゆでます。きゅうりはやわらかくなって食べやすく、ハムはゆでることでほぐれやすく、余分な塩分が抜けます。
✔ 調味料はレンジで軽く加熱することで、酸味が飛んでマイルドに。砂糖も溶けるので味が均一になり馴染みやすくなります。
✔ 味が薄まらないように、ペーパーなどで包み水気をよくしぼってから和えてください。
✔ 1〜2歳児のお子さんで、食べにくそうな場合は、キッチンバサミなどで短く切ってあげてください。
調理法だけではなく、子どもにとっては「楽しい雰囲気」も食が進む大切なポイント。保育園や幼稚園でやっている「いただきます」のごあいさつを真似てみるのも楽しいですね。
お歌を歌ったり、セリフを言ったりと、きっとそれぞれの園で工夫があるかと思います。もちろん、ママやパパの自家製ソングでもいいですよ!楽しい気持ちで、給食レシピを味わってみてください。